Kind's room

アニメの感想、考察など。

アニメ『18if』がとにかくヤバくてエモい

充実したアニメライフを過ごすには普通に面白いアニメだけじゃ物足りない、今回はそんな人にこそ見て欲しいアニメを紹介します。

皆さんは現在放送中の18ifというアニメをご存知でしょうか。恐らく見てない人の方が多いと思うのでざっくりストーリーを紹介すると、主人公が様々な"悩み"を抱えた他人の夢に入ってその"悩み"から救い出すというファンタジー作品です。ちなみに原作はこちらのスマホ向けパズルゲーム

 

本題に入る前にまずは世界観の説明を。悩みを抱えた人間(基本的に女性)は「魔女」と呼ばれ、現実を拒絶し、夢に逃げた結果、いつまでも夢から目を醒ますことができない「眠り姫病」にかかってしまいます。そんな眠り姫病にかかった魔女の夢の中にどうやってか潜入し、魔女の悩みをスパッと解決して目を醒まさせ、ついでに惚れさせるというのが本作の主人公・月城遥人の役目です。

この作品の特徴としては監督や脚本、作画監督などが毎回変わり、一話完結で毎週全く異なるテイストの話が繰り広げられるところです。その分どうしてもキャラにブレが発生したり、ストーリーやノリの整合性が取れてなかったりしますが、個人的には細かい事は気にせず各話単位で別アニメとして楽しむのが一番かなと思ってます。

さて作品や世界観の説明はこれぐらいにして本題に入りましょう。まず1話は「現実世界で自分の殻に篭っていた女子高生の成長譚」、2話は「家族を殺された娘による犯人への復讐劇」、3話は「末期の病気に犯された女子高生のちょっと切ない純愛ラブストーリー」と見事に毎回別アニメなんですが、このあたりは序盤だけあってまだまともでした。

ただ『18if』の暴走が始まったのは間違いなく次の第4話からでしょう。今回は第4話と第5話の「ヤバい」ストーリーを紹介していきます。

※ここからは全部ネタバレになります。

 

第4話 「暴食の魔女」

今回の主人公は読者モデルの嶋村アイリ(cv.加隈亜衣)。付き合ってた彼氏から「ぽっちゃりになった」という理由でフラれるところから物語は始まります。

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始まったかと思えばいきなりアイリの嘔吐シーンが描かれます。恐らく無理なダイエットによる摂食障害の描写なのでしょう。
CMが明けて再び本編に入るやいなや場面は幼少期のアイリがカレーを食べるシーンに。アイリの「おばあちゃん家のカレー大好き!」という台詞からここが祖母の家であることが分かるのですが、そのカレーを一緒に食べてなおかつ調理までしていたのは何故そこにいるのかよく分からない赤の他人の主人公・遥人。この時点で既にヤバいです。
※アイリの横にいる黒髪のポニテの女の子はアイリの従姉妹なんですが、結局最後まで居る意味がよく分からなかったので特に触れません。ヤバいというか怖い。f:id:buckingham0120:20170819003913p:plain

 

そして遥人たち3人がカレーを口にした瞬間突然場面が切り替わり、今度はドーナツいっぱいのポップな世界と可愛い幼女キャラが登場します。完全に別アニメが始まってしまいました。f:id:buckingham0120:20170819005128p:plain

 

この可愛い幼女こそ夢世界でのアイリの姿、つまり"悩み"を抱えた魔女アイリという訳です。ここで遥人がアイリの夢の中に潜入していたことが分かりました。遥人が宙に散乱しているドーナツを一口食べると全く味がしません。このシーンから現実世界のアイリが味覚障害を患っていることが読み取れます。

魔女アイリと邂逅した遥人が「ちっちゃ」と呟くと魔女アイリは怒り、遥人たちを追いかけ回します。ここで夢世界での話は一旦保留。

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場面は再び現実世界のアイリへ。アイリは体型を理由に彼氏にフラれてから減食に励んでおり、大好きなドーナツも我慢していました。しかし痩せるどころか体重は増える一方。そんなある日ふとゴミ箱に目をやると食べた記憶のない大量のドーナツの箱が。そう、アイリは精神的なストレスや無理なダイエットの反動から無意識の過食症夢遊病も陥っており、自分では気付かないうちに毎晩大量のドーナツをキメていたのです。冒頭の嘔吐シーンがここに繋がります。

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場面はまたしても夢世界へ。魔女アイリに追いかけられてた遥人がついに捕まってしまいます。すると魔女アイリは遥人に「もっと食べたい、けど自信ない。お前、食べていいか...?」と泣きながら訴えます。恐らく味覚障害過食症により「食べること」の楽しさを失った現実世界のアイリの自暴自棄な感情が現れたのでしょう。このシーンは加隈亜衣さんの演技が凄くて絶妙な"狂気"が生まれていました。そして物語は最終局面へ。

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場面は冒頭にも出てきたアイリの祖母の家に。「さっきの追いかけた捕まったのくだりは一体なんだったのか」「そういえば従姉妹の女の子は何処にいったのか」などいろいろ気になる点はありますが、もう細かいことは気にしたら負けです。「おばあちゃん家の思い出のカレー」を勢いよく食べる遥人をよそに魔女アイリの口は全く進みません。

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遥人にカレーを食べるよう促される魔女アイリですが、ここで「食べると痩せちゃう」「食べて痩せて、彼氏にフラれちゃったの...」とよく分からない発言を繰り返します。アイリは太ってフラれたはずなのに。

結局この台詞の真意はよく分かりませんが、恐らく夢世界と現実世界は対照になっており、「夢世界の魔女アイリは食べると痩せる」=「現実世界のアイリは食べてない"はず"なのに太る」という解釈になると思います。夢遊病を患った現実世界のアイリが無意識に食べて太っていたことからも合点がつきます。ただこの「夢世界の魔女アイリは食べると痩せる」という設定はストーリーに特に活かされてた訳でもないので今の考察も全部無駄になります。
頑なにカレーを拒む魔女アイリですが夢世界で出会った女を落とすことに定評のある遥人の説得によりなんやかんや口にすると、「おいしー!たのしー!」と某フレンズのような発言をして、アイリは「食べること」の喜びを取り戻しました。こうしておばあちゃん家の思い出のカレーを食べた魔女アイリは浄化されていきました。

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「食べること」の喜びを取り戻した現実世界のアイリは味覚障害夢遊病を克服し、夢世界で出会った女を落とすことに定評のある遥人のことを思い返しつつ、元カレに囚われることなく新たな恋へ一歩踏み出したのでした......完)

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今回の話を要約すると、体型を理由に彼氏にフラれた読者モデルの小嶋アイリが、精神的なストレスや無理なダイエットから味覚障害過食症夢遊病に陥るも、夢世界で出会った遥人に「食べること」の楽しさを教えられ、味覚障害過食症夢遊病を克服し、元カレに囚われることなく新たな恋へ一歩踏み出したという感じです。
しかし流石にツッコミポイント二箇所ほどあります。恐らく誰も気にしてないと思うんですが最後まで言及させて下さい。
まずアイリが過食症夢遊病を克服するきっかけになった「おばあちゃん家の思い出のカレー」ですが、冒頭のシーンでも終盤のシーンでもカレーを調理していたのは一緒にいたアイリの祖母ではなく主人公・遥人だったのです。これに関しては本当に狙いが分からないのでただだだ困惑するしかありませんでした。

二点目は本作の根幹に関わることなんですが、まずは作品の設定を思い出していただくためにこの記事の冒頭の文章を抜粋します。
悩みを抱えた女性は「魔女」と呼ばれ、現実を拒絶し、夢に逃げた結果、いつまでも夢から目を醒ますことができない「眠り姫病」にかかってしまいます。
今回のヒロインの小嶋アイリ、確かに夢遊病は患っていましたがどこを見返しても「眠り姫病」にはかかっていません。普通に現実世界では起きてアルバイトや日常生活をこなしていました。少なくとも他のエピソードのヒロインは全員夢世界以外では眠りに落ちて入院中(もしくは療養中)だったので、これはシンプルに脚本のミスだと推測されます。いくら監督や脚本が毎回変わるとはいえ全体の設定ぐらいは通して欲しかったなと思いました。


いきなり長くなりましたが、4話はヒロインが味覚障害過食症夢遊病トリプルパンチを患う設定はもちろん、とにかく場面転換が激しく、ノリもよく分からず、ストーリーも「は?」となる部分が多かったので視聴後の感想は「ヤバい」の一言でした。まぁ一番ヤバかったのは魔女アイリ演じる加隈亜衣さんの幼女演技が可愛すぎてヤバいとこなんですが。

 

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第5話 「凡庸の魔女」

今回の主人公は国内トップクラスのフィギュアスケーター三枝美礼(cv.浅倉杏美)。彼女が自分の脚をハンマーで砕こうとする衝撃的なシーンから物語は始まります。

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美礼はフィギュアスケーターとしてだけでなくその容姿から国民的アイドルのような人気を誇っていました。そんなある日、突然原因不明の「眠り姫病」を患って昏睡。今も病院で眼を醒ますことなく眠り続けています。今回はそんな彼女が見ている夢の中(夢世界)に偶然にも主人公・遥人が迷い込みます。

 

遥人は夢世界の研究者である神崎カツミ(cv.子安武人)と共に魔女の手助けをするというのがいつもの流れなんですが、そんな神崎が昏睡中の美礼の病室に訪れて険しい表情を浮かべます。そして遥人に「今回は、助けるのをやめにしないか?」と問います。神崎は自分の妹も眠り姫病を患っており、妹を治す研究のため眠り姫病を患った女性を助けるのに積極的なんですが、今回はなぜか消極的。ちなみに神崎は有名スケーターである美礼の名前を当然元から知っていますが、なぜか現役大学生の遥人は知りませんでした。

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神崎の「やめにしないか?」という忠告もなんのその。遥人は「わざわざ俺に夢を見せに来たんだ。これは何かのサインだと思う」と無駄にカッコいい捨て台詞を吐いて扉の向こうの美礼の夢世界へ。夢世界の出入りは以外と自由だったりします。

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美礼の夢世界は至って普通の大学。そして出会い頭にぶつかるという王道ラブコメ的な展開で魔女美礼と遥人は邂逅を果たします。しかし魔女美礼は「助けなんて求めてない」「ここでの暮らしが幸せ」と遥人を拒絶。
現実世界での美礼はまだ18歳。しかし大人気フィギュアスケーターで常に多忙を極めており、当然ろくに学校行事も参加できなければ友達も出来ませんでした。「普通」の生活を送りたいと願う美礼は人気絶頂中のある日、ついに自分の脚をハンマーで砕いてスケート人生に幕を下ろそうとします(冒頭のシーン)。しかしハンマーを振り下ろそうとした瞬間突然「眠り姫病」に陥って、この夢世界にいる訳です。なので遥人を拒絶するのも無理はありません。

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遥人はそんな美礼の気持ちを理解し、美礼の普通で楽しい学生生活を見守ることにしました。 そんな生活を過ごすうちに美礼はテニサーのイケメン男子に恋に落ちます。もうテニサーって時点で不穏な展開しか予想できません。

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美礼とヤリ◯ン男子の恋は順調に発展。休日にデートするまでになりました。そしてデートも終盤、夕暮れのロマンチックな雰囲気の中でヤリ◯ンが「君と行ってみたい場所があるんだ」「君を、もっと知りたいんだ...」とヤリ◯ンボイスで美礼に囁きます。美礼も満更ではないようで頬を染めます。このあと成人向け漫画ではサークル仲間を呼んできて大◯交の流れですが............

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連れてきたのはホテルではなくなんとスケートリンク。いくら偶然にしても、フィギュアスケートから逃げ出してきた美礼にとってこれほど痛い仕打ちはないでしょう。しかし好きな人と一緒にリンクを滑っているうちに美礼はテンションが上がり、素人が滑るスケートリンクにも関わらず3回転ジャンプを繰り出します。
好きな人と滑ることでスケート本来の楽しさを思い出した美礼。そして二人はいつの間にかいいムードに。このまま二人は幸せなキスをして終了、のはずが舞台は突然暗転。

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再び明かりが戻るとそこは素人が滑るスケートリンクではなく大観衆が見守るプロのスケートリンク。美礼もいつの間にか衣装とメイクで本番仕様の姿になっており、ヤリ◯ンも何処にもいません。大観衆から「帰って来て、美礼!」「また滑ってくれ!」と美礼の復活を望む大歓声が飛びます。スケート本来の楽しさを思い出したとはいえ、ここで滑ってまた同じような「普通」でない多忙のスケート人生を繰り返すのはたまったものじゃありません。そして大歓声のプレッシャーに押し潰された美礼は悲鳴をあげます。

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場面はスケートリンクから謎の黒い空間に。そこには遥人とヤリ◯ンの姿もありました。泣き崩れる美礼に遥人が「でもそれが君の運命ってことかもしれないよ?」と投げかけます。このド鬼畜極まりない台詞に続いてヤリ◯ンも「そうだよ美礼。君も氷の上にいる時が一番輝いてるんだ。だからずっと踊っていて。それが君の、"運命"だから...」と死体蹴りのような台詞を得意のヤリ◯ンボイスで囁いて去っていきます。男2人によるダブルアッパーを喰らった美礼はもう立ち上がれないと思いきや、なんと美礼はこの"運命"を受け入れて立ち直ります。終いには遥人に笑顔で「ありがとう」と呟いて美礼の夢世界は消滅、つまり眠り姫病を克服して救われたことになりました。何も救われてない気もしますがこの件は後述するとして一旦保留。眠り姫病を克服した現実世界の美礼は病室で目を覚まします。

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しかしそこには18歳の国民的人気フィギュアスケーターではなく痩せこけた老婆の姿が。そう、美礼は18歳で眠り姫病に陥ってから老婆になるまで何十年もの間眠り続けていたのです。

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思い返してみれば、国民的人気スケーターの美礼を現役大学生の遥人が知らず、いい歳したオッサンの神崎が知っていたのもジェネレーションギャップと考えれば自然です。加えて神崎は「今回は助けるのをやめにしないか?」と遥人に言っていました。それも当然、眠り姫病を治して目を醒まさせたところで彼女はもう死にかけと言っても過言ではない老婆。それだったら夢世界で幸せな夢を見たまま一生を終わらせてあげた方がどう考えても幸せだったのです。夢世界で魔女美礼も「助けなんて求めてない」「ここでの暮らしが幸せ」と言っていました。今回に限ってはその通りに救わなかった方が良かったかもしれないのです。この最高に後味悪いオチに『18if』のポテンシャルを感じる、そんな5話でした.........(完)

 

今回の話を要約すると、元国民的人気スケーターの三枝美礼(18)がある日眠り姫病に陥り、その夢世界の中で現実世界では多忙で味わえなかった「普通」の生活を満喫するも、夢世界で出会った遥人によっていつまでもリンクの上に立たなければならない「運命」を知り、その「運命」を受け入れることで救われて眠り姫病を克服した。しかし目を覚ましたときは既に老婆だった...という感じです。

今回はツッコミポイントと補足ポイントが1つずつあります。
まずはツッコミポイント。先ほど後述すると言っていた男2人によるダブルアッパーの件です。美礼は夢世界で幸せに暮らしてたにも関わらずリンクの上に立たなければならない「運命」を受け入れたことで救われた形になりましたが、第三者からみればどう考えても救われてません。しかし思い出して欲しいのが本作品の設定。「眠り姫病にかかって夢世界が消滅しないまま眠り続ける」=「悩みが解決してない」ということになるので、美礼の本当の悩みは「過酷なスケート人生を送ること」ではなく「過酷なスケート人生を受け入れられないこと」だったことになります。ただし、先程も言ったように目を覚ましたところで美礼は死にかけの老婆。スケート人生を受け入れたところで当然スケートが出来る身体ではありません。だから今回ばかりは救わなかった方が幸せだったという訳です。本当になんとも言い難いオチです。
そして次は補足ポイント。この作品にはリリィ(cv.名塚佳織)という遥人にしか見えない正体不明の謎の少女がいて毎回申し訳程度にチラッと登場するのですが、実は今回も登場していました。今回の話の重要人物といっても過言ではないテニサーのイケメン男子ことヤリ◯ン、その正体こそヤリ◯ンに姿を変えたリリィだったのです。

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この真相は正直それほど重要ではないのですが、後にリリィの正体が分かるときの重要な伏線になるかもしれないので一応補足しておきました。まぁその頃まで私がこのアニメを見ていればの話ですが。

 

またしても長くなってしまいましたが、5話は前回に比べてストーリーはまだまともでしたがオチへの運び方がとにかくエモかったですね。視聴後の感想は「エモい」の一言でした。まぁ一番エモかったのは今回の主役・三枝美礼の声を担当されていた浅倉杏美さんが先日ご結婚されたということでしょうね。おめでとうございます!

 

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いかがだったでしょうか。こういうアニメの感想というか考察記事を長文で書くのは初の試みだったのでいろいろ至らぬ点はあったとは思いますが、それでも「18if」という作品のヤバさエモさが伝わってくれれば何よりです。最後まで読んでくださり有難うございました。