Kind's room

アニメの感想、考察など。

アニメ『フォトカノ』は忙しい人のためのオムニバス恋愛アニメ

────幾重にも折り重なった真実の中、たったひとつの現実を導き出した瞬間。それは、ニコニコでアマガミのプレイ動画を漁っていたら偶然にもフォトカノの不正登校シーンが関連動画に現れたときのことだった......

先日、2013年に放送されたテレビアニメフォトカノを見たのでその感想を述べていきたいと思う。

そもそもなぜ今さらフォトカノなのかという話だが、記事冒頭にも記した通り、たまたまニコニコでアマガミのプレイ動画を見てた(主に絢辻さんとか絢辻さんとかあと絢辻さん)ときに、関連動画にフォトカノが出てきて気になったのがきっかけである。絢辻さんは裏表のない素敵な人です。

まず初めに、フォトカノは『キミキス』『アマガミ』シリーズなどを製作したエンターブレインによる恋愛シミュレーションゲームを原作とした1クールアニメである。本作では少し特殊な構成を取っており、第1話〜第4話までは共通ルート、第5話以降からはストーリー分岐によるオムニバス形式となり、そこからはヒロイン1人あたり1話(※1)で描かれていた。

この構成に関しては面白い試みだとは思ったが、結論から言うと失敗だったと思う。例えばアマガミのアニメは、最終的にヒロイン1人あたり6話(※2)を擁していたため、各々のストーリーがしっかりしていたと同時にヒロインの魅力も活かせていた。しかしフォトカノは先述した通りヒロイン1人あたり1話で、ルート分岐後は案の定駆け足な展開になり、一話一話がダイジェスト感満載だった。せっかくいいストーリーがあるのに構成が悪いと、描き方次第ではカタルシスが薄くなると共にヒロインの魅力を押し潰すことになる。それが顕著に現れたのは第7話の実原氷里編だった。
(※1)パッケージヒロインである新見遙佳編のみ2話。
(※2)主要ヒロイン6人のみ。1期4話+2期2話。

 

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スクストの澄原サトカではない。本作のヒロインの1人である実原氷里(cv.水橋かおり)だ。食べているのはカレーパンではない。ハンバーガーだ。
氷里は4話までの共通ルートでは、引っ込み思案でぼっちな無表情キャラという性質上、他ヒロインに比べて影の薄い方だった。主人公である一也とはたまに会っては一言二言交わす程度の仲。それが当番回では戸惑うぐらい劇的に変わる。
氷里は一也と同じ写真部(※3)の後輩で、いつも風景ばかり撮ってポートレート(人物写真)を全く撮ろうとしない。そんな彼女を気にかけつつ一也はいつしか「彼女の笑顔を撮りたい」と思うように。氷里の性格上、心を許していないとはいえポートレートのモデルを日常的に引き受けていることに若干違和感を感じるが、裏表のない一也に少し心を許していると解釈すればまぁいいだろう。一也はその後もストーカー紛いの行動で氷里を笑わせようと必死になり、その熱に折れた氷里がいよいよ笑顔を見せるように。本来無表情キャラにおいて「表情を解放するシーン」というのは非常に重要で、心の奥に隠されていたその笑顔を導き出せると見てる側も嬉しくなり、必然的にヒロインに対する好感度も上がるものである。しかし、氷里編では尺の都合上それがあまりにもあっさり描かれていたため、せっかくの笑顔も"薄く"感じてしまった。
(※3)正確には一也の所属する写真部ではなく、そこから派生したフォト部。

心置きなく一也と接するようになった氷里はいつしかデートをする間柄に(まだ付き合ってはない?)。そんなデートも終盤、というか尺的にも終盤、ここで氷里が無表情になった理由が明かされる。それは中学時代、上辺だけの付き合いでつるんでいた友人たちに裏切られ、その友人たちと距離を置いた途端クラス全体からハブられたのをきっかけに、人を信じられなくなって「嘘の笑顔」が嫌いになったというもの。本来ヒロインが胸の内を明かした時は、主人公が何か核心を突くような、支えとなる言葉をかけてシリアスが打開される流れが必要だ。しかし一也は特にそういう言葉もかけず、氷里も「一也なら信じられる」とあっさり攻略され、2人はそのままキスするという急転直下っぷり。氷里編は恐らく作中最もシリアスなストーリーだっただけに、こういう部分に尺を費やせなかったのはヒロインの魅力を押し潰したという点でも非常に痛かった。

 

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ただそんなカツカツの尺の中でも、ヒロインを水着に着替えさせてえっちなシーンを絶対ねじ込むぞという気概、というか執念を感じられるのは本作の良さだ。内向的な少女が見せる解放的な姿、エクセレンッッッ!!!!!

 

先述した第7話の実原氷里編、そして第12話の深角友恵編は個人的には残念だったが、他はそれほど悪くはなかったように感じた。理由は単純、尺の問題だ。氷里や深角友恵(cv.沢城みゆき)のように、共通ルートでそこまで一也と打ち解けていないヒロインは、当然個別ルートの一話のみで付き合うまでを描くのは難しくなる。しかし、それ以外のヒロイン、特筆するならば幼なじみ枠その①の新見遙佳、幼なじみ枠その②の間咲ののか、ド直球萌えヒロイン早倉舞衣あたりは最初から一也にデレてた節があったので、むしろ攻略までをテンポ良く描けてて好感持てた。良くも悪くも「忙しい人のためのオムニバス恋愛アニメ」だ。

先ほど、アマガミと比較して本作の出来を残念だと言った。確かにそうかもしれない。しかしアマガミのような2クール作れる大人気コンテンツと比べるのがそもそもナンセンスな気がしてきた。今度は2017年に放送されたセイレンと比較してみたい。

セイレンは6人の主要ヒロインが居るにも関わらず、アニメは1クール、結局スポットを当てられたヒロインは3人だった。円盤の売り上げから察するに2期は不可能だろう(※4)し、1年経ってもゲーム化の情報すらない。残りのヒロイン3人が表舞台に出る日が来るかどうかすら分からない状況である。そう考えると、1クールで8人のヒロインを多少強引にでも描き切ったフォトカノは少しでも評価できるのではないだろうか。少なくとも原作ゲーム勢へのファンサービス、そして原作ゲームの販促アニメにはなっていたに違いない。
(※4)全6巻中1巻も1,000枚に乗ってないらしい。


フォトカノ最大の魅力、それは何と言ってもヒロインの可愛さだ。ここからは個人的に刺さったヒロイン5人を萌豚視点全開で語らせてもらいたい。

まずは本作のパッケージヒロインである新見遙佳(cv.伊藤かな恵)。キャッチコピーは「誰もが憧れるテニス部の幼なじみ」。遙佳編のみ2話構成となっている。さすがパッケージヒロインは尺が違った。

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一也と遙佳は昔からの幼なじみだが、遙佳がスクールカースト上位の存在になったため二人の間には微妙な距離が空いていた。そんなもどかしい仲を打開するように、遙佳はカメラを始めたという一也にいきなり水着モデルを志願。彼女は純粋な性格とは裏腹に結構大胆でえっちで可愛い。こっちが行動を起こさなくても女の子の方から勝手に寄ってくる理想的な展開を前に、本作の個人的評価は急上昇。海水浴のシーンでは一也を人影に連れ込んで「あなたに触れてほしい」と自分の胸を差し出す始末。あーダメダメえっちすぎます。

 

続いてはこの学校の生徒会長を務めている室戸亜岐(cv.中原麻衣)。キャッチコピーは「理想の学園を追い求める、完璧な生徒会長」。何を隠そう私がニコニコでアマガミのプレイ動画を漁っていたら偶然にも関連動画に現れた不正登校シーンで不正登校をしていた張本人だ。

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彼女は生徒の手本となる厳格な生徒会長にも関わらず、遅刻がバレないように校舎裏から学校に忍び込んでいたところを、偶然にも一也に見つかってしまう。完全に弱みを握られた亜岐は、この不正登校を口実に一也にあられもない写真を撮られまくる。本来なら胸糞悪い展開なのだが彼女の表情は満更でもなく、むしろノリノリに見えた。そう、不正登校さんはツンデレでドMなのである。The 生徒会長という感じのキャラクターで人一倍責任感を持っているが、胸は全くない。胸は、微塵もない。

 

3人目は一也の中学時代からの幼なじみでソフトボール部所属の間咲ののか(cv.斎藤千和)。キャッチコピーは「天然活発ソフトボール娘」。このアニメの中に2人、幼なじみポジションがいる!

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ののかはある日階段をダッシュで駆け降りていたところ、偶然出くわした一也と正面衝突し、その際に口と口がぶつかってしまう。明るく活発な彼女は一也とキスしてしまった事実を笑って受け入れつつも「初めてがだっつん(※5)で良かった」と素直にデレるところが可愛い。それをきっかけに一也への元から抱いていた恋心を抑えきれなくなり、なんと一也へいきなり告白し、そこから自分に惚れさせるという素晴らしい積極性を披露する大盤振る舞い。海水浴のシーンで写真のモデルになった際には「手ぶらになろっか?」とか言う始末。この作品の幼なじみ、どっちも強い。
(※5)ののかだけが使う一也の呼び名。


4人目は新体操部に所属する小悪魔系ド直球萌えヒロインの早倉舞衣(cv.金元寿子)。キャッチコピーは「新体操に打ち込む、純真な下級生」。

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被写体を探していた一也の前に突如降臨し、スケベショットの撮影を快く許可してくれた純朴な天使。特筆すべきは第4話で一也のエロ本を見つけた時の反応。彼女の純朴な性格から普通に照れるのかと思いきや、それを弱みに一也を手玉に取るという小悪魔的な側面を披露。不正登校さんの逆パターンだ。事故で一也に押し倒された際も完全に「受け入れ」体勢で、意外とマセてそうなところも可愛い。この作品全体に言えることだが、基本的に主人公が何もしなくても女の子の方から都合よく寄って来てくれるので最高。


最後は主人公・一也の妹である前田果音(cv.伊瀬茉莉也)。キャッチコピーは「アイドル志望のキュートうさ妹」。

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兄である一也を慕う、一家に一台は欲しいブラコン妹。常に笑顔で明るくて元気な如何にも「理想な妹」という感じで、ときには一也と他ヒロインを結びつけるアシスト役をしたりなんかもする。そんな彼女にヒロインとしてスポットが当たるのは満を持しての最終回。兄と妹の恋仲が描かれるおまけルートのようなお話だが、果音編では2人がそういう感情を抱くのも腑に落ちる自然な「理由」が描かれており、最後にして明かされる意外な真相とロマンチックな物語が見応えあった。それにしても伊瀬茉莉也さんの演技の幅には毎度驚かされる。


以上の5人が個人的には好きなヒロインだったが、ハッキリ言ってこの作品の女の子はメインキャラもサブキャラも総じて全員可愛い。欲を言うならばステルス内田さん回も欲しかった。

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アニメ『フォトカノ』全体を通して、萌豚視点で作品を見ると高評価、ストーリー重視で見ると物足りないと言うのが率直な感想だ。そう、やっぱり物足りないのだ。作品から漂う爽やかな雰囲気、学園青春ラブコメ全開の甘酸っぱいストーリー、それを彩る魅力的なヒロインたちなど、惹かれる要素は揃っていただけにもどかしいものがある。ただ確実に「好きなアニメ」の部類に入るし、ヒロインたちでもっとブヒりたいという想いも抑えられそうにないので、もしかすると原作ゲーム買っちゃうかもしれない。その時はまたブログにて報告したいと思う。

 

こうしてアニメ全話見終わったあと、改めてOPのこの構図を見ると今までヤった女コレクション感が半端なくて好き。

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最後に、このアニメのEDは映像・楽曲ともに素晴らしく、夏らしい爽やかなサウンドでノスタルジックな気分に浸れるのでオススメ。