Kind's room

アニメの感想、考察など。

『Vivy』8話を見たあとでいろいろ考える

6話でのメタルフロート事件よりAIの発展スピードは抑制、それにより人間とAIの結びつきが弱まり、両者に軋轢が発生。それを払拭し、人間とAIの架け橋となる重要な意味を持つのが今回の『ゾディアック・サインズ・フェス』。

正史では、そのフェスの会場でオフィーリアが自殺。「AIにも心があるから自殺できた」故にAIも人間と同じだという世論になり、AIと人間の境界が曖昧になり、AIがより人間社会に溶け込むきっかけになった。というのがマツモトの解説。

 

  • なぜマツモトは「その場凌ぎ」にこだわるのか

 オフィーリアの自殺を直前に止めたとしても、ディーヴァの言う通り、根本的な原因を取り除かなければ、また同じことが起こりかねない。なのにマツモトが「その場凌ぎ」で止めればいいと考えるのは、恐らく自殺の「事実」だけ取り除けばいいと考えているからではないか。

オフィーリアが自殺すると後のAI史に影響を及ぼすため、彼女の自殺を食い止める(自殺という事実をなくす)必要がある。しかし当たり前ながら、自殺を止めるには「原因」を取り除くことが必要であり、そのためには当事者の心に寄り添うことが求められる。

マツモトはAIに心がないと考えるAIである。つまり自身の心も分からないはず。心が分からなければそもそも自殺という発想にも至らないため、自殺する当事者の心なんて、理解どころか想像もできないだろう。故にマツモトは、当事者の心に寄り添えないため、「原因」を取り除くという過程の必要性を理解できず、「事実」だけ取り除けば解決できると考えているのではないか。

 

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「心を込める」とはどういうことかを常に模索していたヴィヴィ。「ヴィヴィとは一緒にそのことで悩んであげなかったの?」と問うディーヴァに、「僕とヴィヴィはそんな関係じゃありませんよ」と答えたシーンも、マツモトが他者の心に寄り添えないことを示していた。

もっとも、屋上でオフィーリアの自殺を止める際、マツモトは彼女の自殺の原因を述べてみせた。「歌で人を幸せにする」という使命の中に、彼女のパートナーAIであった今は亡きアントニオを組み込んでしまい、使命を果たす機会を永遠に失い、それが原因でエラーを起こし自殺する...と。 

ただしこれは、マツモトがオフィーリアの心に寄り添って出した結論ではなく、似たような原因でフリーズしたヴィヴィという前例があったから、それに基づいて理屈を並べただけ。理解でも想像でもないのである。

以上のことから、マツモトがオフィーリアの自殺を「その場凌ぎ」で止めればいいと考えているのは、後のAI史に影響を及ぼすその「事実」のみを取り除けばいいと考えているからであり、自殺の「原因」を取り除くという過程の必要性を、心が分からないため理解できないからだと推測する(無理があるか?)

 

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自殺を扱っていることからも、この話数のテーマが「心」であることは間違いないだろう。マツモトはAIに心がないと考えるAIであり、自身の心も分からないが、心がないわけではない気もする。その証拠に、計画に不必要になったはずのヴィヴィ(ディーヴァ)を守り、ディーヴァにその理由を問われた際は何も答えられなかった。これはマツモトにも潜在的に心が存在していることを示唆していたのではないか。

ストーリーの方で言えば、8話のラストはオフィーリアは実はアントニオでした~というオチ。ということは、5年前に機能停止したのはオフィーリアの方だった?ではなぜオフィーリアの皮を被ったアントニオは自殺する必要があった?というか垣谷は昔からAIに助けられてばかりなのに、なぜAIを滅ぼそうとしていた?なんもわからんくなってきた。

何はともあれ、日高里菜さんのゲス演技は耳に良いので助かる。