Kind's room

アニメの感想、考察など。

『ワンエグ』6話を見たあとでいろいろ考える

ワンダーエッグ・プライオリティ6話...........すごい回だった。

物語が根底からひっくり返るような、今までの先入観やらが全部覆されるような、恐ろしくて悔しい感覚。こんなのなかなか味わえない。

今回はいろいろ情報量も謎な点も多かったので、自分の考えを整理しておきたい。

 

 

 

  • なぜアイは沢木先生を避けていたのか

アイが今までずっと沢木先生を避けていたのは、小糸の自殺に関わっていることへの疑念や、母子家庭にズケズケ踏み込んでくることへの嫌悪などが理由だと思っていた。加えて、今回の「ママたち、お付き合いしようかと思うんだけど」という脳天をハンマーで殴られるぐらいの衝撃展開により、アイは先生をますます嫌うものだと思っていた。

もちろん、これに対しアイは反対したが、どうやらママを先生に取られる(母子家庭に踏み込まれる)とか、先生のことが生理的に無理だとか、そういった嫌悪は抱いていないらしく、小糸の自殺に関与してる件だけを気にしていた。

つまり、仮にママと先生が付き合った場合、小糸の自殺に先生が関与してる疑惑がうやむやになるのでは?仮に関与してたと分かってもママのために先生を非難できなくなるのでは?と危惧したため、アイは反対していた。

 

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それだけに、ねいるの「アイも先生が好き」という発言は、これまた脳天をハンマーで殴られるぐらいの衝撃だった。むしろ嫌ってたんじゃなかったのか!!!

 

ねいるが用いたオッカムの剃刀(初めて聞いた)は、

必要が無いなら多くのものを定立してはならない。少数の論理でよい場合は多数の論理を定立してはならない。

という、14世紀の哲学者・オッカムが多様した指針らしい。要は問題を単純化すること。それを踏まえて、ねいるがここで言いたかったことを考えてみる。

まず分かっている事実は「ママが先生と付き合うことにアイが反対している」こと。

この事実を証明するための、仮定の説明を付け加えると、

「小糸の自殺に先生が関与してるかもしれないし、関与してたと分かってもママのために先生を非難できなくなるから、ママが先生と付き合うことにアイが反対している

となり、話が複雑になってくる。では、不要な要素を削ぎ落して、問題を単純化するとどうなるか。ねいるが整理した結果が、

「アイも先生が好きだから、ママが先生と付き合うことにアイが反対している

 

まず前提として、アイは小糸を今でも友達として大切に想っている。その小糸の自殺に先生が関与してる疑念も抱いている。でも、確信は持てない。だから現時点では、ママが先生と付き合うことに反対する理由としては十分ではない。

反対する理由が、母子家庭に踏み込まれることへの嫌悪でもない、そもそも先生が嫌いなわけでもない、そして小糸の自殺への関与疑惑とも言えない。では、いったい何なのか。そこで彗星のごとく現れたのが「アイも先生が好き」である。

 

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いつ好きになったかは、のちの回想にもある通り、オッドアイを魅力的と言ってもらえたときだろう。自身のコンプレックスを肯定してもらえただけでも理由としては十分だろう。そもそも思春期の女の子に対して恋に落ちる理由を求める(考える)のも野暮な気がするが。

「アイも先生が好き」と仮定した場合、ママと先生の申し出にショックを受けたのは、二人の交際を反対したのは、先生にママを取られたからでなく、むしろ先生をママに取られたからってことなのか...?

つまりつまりつまり、今までアイが先生を避けてるように見えたのは、いわゆる好き避けだったってことなのか...? 

 

  • なぜ今回護られたのは幽霊少女だったのか

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これまでエッグ世界でアイたちが護ってきた女の子たちは、いじめ被害者(アイ担当)、アイドルファン(リカ担当)、同性愛者(桃恵担当)、死へ誘惑する女(ねいる担当)など、アイたちが救いたい子に境遇が似ている、もしくはアイたちに影響を与える場合が多かった。つまり、それぞれが護るべき子は、無作為に選ばれているのでなく、それぞれが担当する意味がちゃんとあるはず。

今回の6話では、幽霊が見える少女だった。それはつまり「見えないものが見える」こと。それこそ今回のテーマだった。

 

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幽霊少女の数珠を手にしたことにより、アイは幽霊が見えるようになった。今まで見えなかったものが見えるように、気づけるようになった。それは恐らく、今まで無自覚だった先生への恋心に気づけたことの暗喩だったのではないだろうか。

 

  • なぜアイは学校へ行く決心をしたのか

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ワンダーキラーを退治して少女を救い、現実世界に帰ってきたアイ。家で入浴してる最中にママが帰宅。脱衣所に脱ぎ散らかしてた服のポケットから、ママが何かを取り出したタイミングで慌てて風呂から上がり、びしょ濡れのまま学校へ向かった。

ポケットに入っていたのが数珠なのかペンダントなのかはハッキリしないが、ママがポケットから取り出して服の上に置いたと考えるならば恐らく数珠だろう。

数珠は先述したように、今まで気づけなかった気持ちに気づけた象徴としての意味を持つ。

自分の気持ち(数珠)を、ママに気づかれそうになったから、慌てて風呂から上がり、それを持ったまま学校へ向かった。そして先生を見つけ、晴れやかな表情で「わたし、学校行きます!」と告げた。

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アイが学校に通うようになれば、先生がママと会う理由がなくなるから。

 

 

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今まで本作は、センシティブなテーマを扱う社会風刺ファンタジーだとか、自殺した大切な人を取り戻す友情の物語だとか、重い十字架を背負いながらも懸命に戦う少女たちの青春群像劇などと勝手に思っていたが、もしかすると本当は、思春期の女の子の儚くておぼろげな恋愛感情を主題とする物語なのかもしれない。

今回の6話で、この物語が、そして大戸アイというキャラクターがますます分からなくなってきた。それゆえに若干暴走気味の考察になってしまったが、この分からなさにどんどん惹きつけられる。ワンダーエッグ・プライオリティ、恐ろしいアニメである。

まだ折り返しだし、ここからどうなるのか楽しみすぎる。