2020春アニメ・格付け&総括
面白いだけでは勝ち残れない修羅のクールとなってしまった2020春。視聴ラインナップに入っていた作品のうち4つが放送延期となってしまい、最終的な完走も「11」に留まった。
過去の名作アニメなんてアマプラとかdアニメにいくらでもある訳だし、今期アニメの数が減っても過去作で埋めればいい訳だし、極論を言えば面白いかどうかさえも分からない放送中のアニメを追う必要なんてないのである。では、なぜ僕は毎クールせかせかとアニメを追っているのか。
それは、「今期アニメ」でしか味わえないものがあるからだ。全12話を一日で一気に見るのと、週一のリアタイで3ヶ月付き合うのとでは、作品に対する思い入れの深さも違ってくるだろう。何より、今期の推しヒロインが3ヶ月の間にコロコロ変わる体験とか、どのアニメが3ヶ月の激しいデッドヒートを最終的に制したかとか、そういうのは「今期アニメ」でしか味わえないのではないか。
こんな状況の中でも「今期アニメ」を絶やさないでくれたアニメ業界の方々に感謝して、2020春を振り返っていくとする。
格付けの基準としては、
【金賞】:今期で総合的に最も優れた作品
【銀賞】:金賞に次ぐ優れた作品
【銅賞】:銀賞に次ぐ優れた作品
【技能賞】:脚本、演出、作画など技術面で光った作品
【敢闘賞】:全体的に安定して高い満足度を誇った作品
【殊勲賞】:個人的に強いインパクトが残った作品
【選外】:惜しくも入賞を逃した作品
【優勝】:今期で最もエンターテイメント性に優れた作品
といった感じで独断と偏見とさじ加減で決めている。
それでは早速【金賞】から。
【金賞】
該当作品なし
【銀賞】(2作品)
『神之塔 -Tower of God-』
今期最大のダークホースにして2020春アニメの塔-トップ-に君臨するにふさわしいアニメだった。
序盤は色濃い猛者たちによるバトルロワイヤル的要素がメインでそれだけでもワクワクしたが、各キャラクターの心情(戦う理由)が掘り下げられるようになってからは抜群の面白さ。
本来なら蹴落とし合いになるべき試験が、いつしか主人公・夜を中心とした「皆で協力して乗り越えるもの」へと変わったのは、見方次第では"生温さ"を感じたかもしれない。しかし、利己主義より仲間意識を尊重する王道の少年漫画のような"熱さ"こそ、本作に見出すべき魅力だったと感じた。
加えて、ヒロインであるラヘルの存在も印象的。夢を叶えるためなら大事な人さえ蹴落とし、潔いほど利己主義で在り続ける、本作のアンチテーゼとも言うべきラヘル主体の話を最後まで温存してたのは見事だった。オタクは「今までの話が実は全てプロローグに過ぎなかった」みたいな終わり方に弱いので。
本作に好感を抱けたのはキャラクターによるものも大きい。特にアナク・ザハード(かわいい)とエンドロシ・ザハード(美人)の二人の物語は熱かった。オタクは「宿敵として見ていた相手がいつしかかけがえのない親友になっている」みたいな関係性に弱いので。
観測範囲内ではわりと好き嫌い分かれる作品であったものの、個人的には今期最も続編が見たいアニメとなった。
『球詠』
スポーツはサッカー以外に興味を示さない僕が、ここまで野球アニメに熱中するとは思わなかった。
きらら原作とはいえしっかりスポ根。細かな戦術・技術面の内容に一話まるまる割くあたりが、萌えだけじゃない本気のスポ根らしさを感じられた。こういう比較的地味な特訓回を積んできたからこそ、チームとしての成熟度の深まりにも説得力があった。いざ試合となると、チーム間での頭脳戦、個人間での心理戦が常に繰り広げられ、野球の奥深い魅力が伝わってきた。
なかでも、梁幽館戦は手に汗握る試合展開。押し出し敬遠も辞さないリアリストな戦い方の新越谷と、戦力差でぶん殴る梁幽館の好ゲームは、日常系の域を凌駕した緊張感のなかで見れた。中田のホームランで味わった絶望、そこから起死回生の希の逆転スリーランでの歓喜は、間違いなく今期トップの盛り上がりを感じたシーンだった。
中村希ちゃんを筆頭とした、可愛さ火の玉ストレートな萌えで奪ったストライクの山は数えきれない。"よしのぞ"や"たまよみ"などのカップリングも尊さ満塁ホームランだった。
作画面での不安定さはあったけど、それをストーリーの良さでチャラにする、まさに『プラスマイナスゼロの法則』を体現したアニメ。今期でも一,二を争うくらい好きだった。原作も詠み始めた。
【銅賞】(2作品)
『波よ聞いてくれ』
深夜アニメを見始めて6年ほど経つが、これほどリアタイ視聴に価値を感じた作品はなかったかも。
「深夜3時半から生放送のラジオ番組」を描くアニメを、深夜3時近くに見られるのは奇跡の視聴体験。リアルタイムで見るからこそ、ド深夜に突然始まる「架空実況」を、ミナレのリスナーとして楽しめた。
特に最終回は鮮烈。ラジオの収録中に北海道を震源とした大地震(モデルは2018年の胆振東部地震)が起きるという内容。奇しくも「実際の地震が起きた時刻」と「アニメの放送時刻」も近かったうえに、今までのストーリーとは全く異なる展開が起こった混乱も相まって、画面内で起こっていた非日常感を最大限に追体験できた。
全体的に言えることとして、これから何が始まるのか全く分からない怖さと、何をしでかしてくれるんだという期待感があった。ミナレのラジオと同様に、見てる方もぐちゃぐちゃな刹那主義というか無政府主義的なものを本作に求めていて、その期待に毎回完璧に応えてくれたのが一番の良さだったかもしれない。あと南波瑞穂ちゃんが可愛かった。
『かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~』
正直非の打ちどころがない。かぐや様と会長によるドキドキのラブロマンス回も、下ネタ極振りのギャグ回も、陰キャに厳しいシリアス回も、どれも完成度が高くて素晴らしかった。
今期のかぐや様を語るうえで11話の石上回は欠かせないだろう。自己の中で膨らんだ無駄にデカい正義感とか、自分の理解者が現れることへの儚い期待とか、誰かのためにやったことが全て裏目に出る不器用さとか、それにより羞恥と自己嫌悪に苛まれる感覚とか。"陰"を歩いてきた者にとっては胃もたれ起こすんじゃないかってぐらい重くのしかかるエピソードだった。これだけ"陰"への理解がありながら、"陽"にも受け入れられる作風なのが改めてすごいなあと思う。
伊井野ミコをはじめとした新キャラの活躍もあり、一期から着実に上積みされた安定感ある面白さだった。一周まわって藤原千花が一番可愛く見えるのは気のせいか?
【技能賞】(脚本、演出、作画など技術面で光った作品)
『かくしごと』
ギャグとシリアスの塩梅が絶妙で、笑って泣けるいい作品だった。コメディとしては個人的にハマりきらない部分もあったが、思わず唸ってしまう巧妙なギャグセンスはさすがだなと思った。
あとは何より終わり方が気持ち良い。『慎重勇者』のときも思ったけど、原作ありの1クールアニメであれだけ綺麗にまとめられるのってすごいと思うし、ああいうのが本来あるべき1クールアニメの形なのかもしれない。おい聞いているか今期のぶん投げエンドアニメたちよ。
『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった...』
のうきん,防振りと続く女主人公のなろう枠。この手の作品は主人公が男だったら絶対鼻につくような展開もストレスフリーで見られるのが良い。真剣に萌豚やってて本当に良かった。
主人公・カタリナの元気いっぱいで人たらしで絶妙にアホな性格に好感が持てたおかげで、圧倒的なハーレムの構図にも抜群の説得力があった。マリア,ソフィア,メアリはもちろん、男性陣もみんないい奴だったのも良かった。
他のアニメがいつ放送延期になるのかドキドキという状況のなか、放送開始前から完パケで"破滅フラグ"を確実に回避し、提供画面で遊ぶなどの余裕も毎回見せつけ、最終的には2期決定という圧倒的な強者感で2020春クールを駆け抜けた点を踏まえて【技能賞】とした。
【敢闘賞】(全体的に安定して高い満足度を誇った作品)
『プリンセスコネクト!Re:Dive』
原作未履修だけど、『このすば』の系譜を感じるコメディタッチとテンポの良さで、ソシャゲをうまくアニメ映えさせてた印象。戦闘シーンの迫力なんか見ていても恵まれた作品だというのは伝わってきた。
日常回が中心だった中盤まではわりと楽しんで見られたのだが、新キャラが主体の話だったり、シリアス展開が多くなってくるとどうも入り込めなかったのはソシャゲアニメの宿命か。もっと美食殿が美味い飯を追い求めるだけの話が見たかった。
『アルテ』
第1話の自らの髪を切り落とすシーンは鮮烈で、逆境にめげずに立ち向かう根性、夢に直向きで常にポジティブな性格など、シリアスをものともしないアルテのヒロイン像が見てて気持ち良かった。
中盤以降はやや見応えに欠けるエピソードが続いたが、悪役令嬢カタリーナが登場してからは視聴意欲が復活。特に11話以降の素直になったカタリーナは破壊力が高すぎた。
個人的には男女差別が著しい作風があまり好きではない(本作はそこがミソなんだろうけど)のもあって、いまいちハマりきれなかった感はある。
『継つぐもも』
2期が決まったときは正直リアクションに困ったが、やはりつぐももは面白かった。特に序盤は神回ラッシュだったし、一話完結エピソードやらせたらつぐももは本当に強い。
正直なところ、本格的にシリアスに突入してからは視聴意欲があまり湧かなかったけど、終盤のストーリーとバトルアクションには釘付けになった。
こっちもアニメオタクとして鍛錬を積むからまた3年後にお互い成長した姿で会おうなという気持ち。
【殊勲賞】(個人的に強いインパクトが残った作品)
『グレイプニル』
清々しいまでのおれたたエンドだったけど、1クールという制約のなかでこういう着地は嫌いじゃない。オタクは「今までの話が実は全てプロローグに過ぎなかった」みたいな終わり方に弱いので。
江麗奈のヤンデレ+コミュ障が途中から死に設定と化してたり、なんの必要性もないのにレズセックスやろうとしたり、映画泥棒が死んだのに全然心配されてなかったり、物語的に重要っぽいポジションを匂わせていた三船奈々が結局最後までただ可愛いだけの存在だったりなど、ツッコミどころを挙げればキリはないけど、そういう大味な点も含めて楽しめたと思う。毎週日曜のリアタイにワクワクしてたくらいには好きだった。
『社長、バトルの時間です!』
今期は気負わずに見られるアニメが少なかったため、そういう意味でシャチバトの存在はありがたかった。
もっとも、労働要素がある回はどれもパッとしなかったが、労働をしていなかった4話,7話,10話のエピソードは素晴らしかった。萌えの戦力では今期でも有数の作品だったと思う。
【選外】
該当作品なし
【優勝】
該当作品なし
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というわけで今期は金賞を「該当なし」とした。実質的に最も評価が高かったのは『神之塔』と『球詠』だが、金賞にするにはあと一歩何か足りない気がした点、過去に金賞にした作品たちと比べてやや力不足に感じた点、今期の作品数が少なかった点などを踏まえ、こういった評価に至った。
もっとも、金賞がなかったとはいえ「選外」もなかったので、充実したクールだったのは間違いないと思う。
まあ一番楽しんで見てたのは『22/7 計算中』なんですけどね。